和のおもてなし
間もなく端午の節句。近頃はあまり見かけなくなったが、男の子の和服姿も凛々しくていいものだ。
最も女将の記憶に新しいのが、祖父母と両親に伴われ、上品な浅葱の紋付羽織袴で訪れた男の子。稀に見る淡い青緑は白地を染め上げた特注品で、羽織には五つ紋。もとは父親が幼少期に身につけていたものらしい。親子二世代の晴れ姿を重ねていたのだろうか、目を細めて見守る祖父の姿も印象的だったそうだ。
良いものは何代にもわたって受け継がれてゆく。節句祝いや節句料理も然り。「男の子が強くたくましく育ちますように」。端午の節句も、鎧兜や鯉のぼりなどのお飾りはもちろん、菖蒲をはじめ食材の一つひとつにも縁起の良いいわれがある。
日本料理では、晴れの席に供する料理や器だけでなく、床の間の掛け軸や季節の花などのしつらいも含めて祝意を表わすのが常。“和”の文化に触れる機会が少なくなった今こそ、節目の行事は和の心を伝える『たはら』で、かけがえのない家族の時間を。
「子に過ぎたる宝なし」。子を想う親の心とともに、おもてなしの文化も後世へ受け継ぎたい。